【統計解説】 品質工学(タグチメソッド)を確立した田口玄一の語る直交表と交互作用
こんにちは、コウヘイです。
軽く自己紹介をすると、メーカで開発業務をしながら、開発効率を上げるための方法を模索する中の一つとして、品質工学や実験計画法の学習と実践を進めている者です。
はじめに
メーカで開発、設計をされている方なら一度は聞いたことがあるであろう品質工学、実験計画法。
でもなんか難しそうでよくわからない。。
えぇ、そのような方にこのブログでは噛み砕いた記事を色々と書いていきます。
今日は、多少企業で研修を受けたり自分で本を読んだりしたことがある人向け。
参考図書はコチラ。
作者名から推測できるようにタグチメソッドを確立した田口玄一氏がゴリゴリ作り上げた大著。
どのくらい大著って、手元にある本は復刻版でないので少し違うかもしれませんが、
- 第3版 実験計画法 上 1~527ページ(+目次・索引)
- 第3版 実験計画法 下 528ページ~1095ページ!(+目次・索引)
なんと1000ページ超え!
えぇ、忙しい皆様は読む必要がありません、最も美味しいところだけを要点絞って、ぎゅぎゅっと密度濃くして、このブログにて説明させて頂きます!
引用解説:交互作用と直交表について
ここで、実務で使う場合に大事にしておくべきことを一つ引用して解説させて頂きます。
本書では、ほとんどの場合、交互作用を考慮していない.それは交互作用がないからではない.交互作用がありうるから、交互作用を省略した主効果のみの実験をするのである.交互作用が大きいときには、あらゆる組み合わせの実験以外のどんなわりつけでもうまくゆかない.1因子ずつの実験でも、交互作用を省略した直交表の実験でもうまくゆかないのである.交互作用を小さくする方法は、わりつけではなく、つぎのような固有技術や解析技術で解決すべき事柄だからである .
(1)加法性や単調性のある特性値に変える.
(2)因子の水準について相互関係を考える.
(3)分類値のときには累積法のような正しい解析をする.
(田口玄一著、第3版実験計画法、p148)
いやーこの部分だけでも世の中のほとんどの人が誤解していることをズバッと言い切っていて背筋が伸びる。
しかもこの本が出たのが昭和51年、1976年というのだから恐ろしい。もう44年前。。
社内教育でも社外セミナーでも実務上の議論でも、交互作用をありがたいものくらいの感じで取り扱っていましたよ。。
交互作用とは
2つの因子(出力に影響を与えるパラメータ)が相互に影響し合うこと。
たとえば因子を
- 食べ物の種類(ケーキと焼き肉)
- 飲み物の種類(ホットコーヒーとビール)
とし、目的特性(いわゆる出力)を満足度とする。
ケーキのときはホットコーヒーが嬉しいけど、焼き肉になったらビールの方が嬉しい。。
つまり、片側の因子によってもう一方の因子の効果が逆転してしまう。
交互作用が無い時はこんなの。
食べ物が餃子でも焼き肉でも烏龍茶よりビールの方が嬉しいよね*1。
さて、話を戻して、実務上で何かを設計するときには交互作用の効果は無いに越したことはない。
無いに越したことはないけど、ありそうなものは直交表の交互作用列に割り付けるのが最近私が聞くオーソドックスな手法でした。
しかしながら、タグチメソッドを掘っていくとそんなことはなかった。
システムの安定性を考えると交互作用が「無いように」設計しないと、市場に出したときに不具合が発生するリスクがある。
そういうことを学んで、そうかそうか、と思っていたら、はるか44年前の本で既にしかもご本人の田口玄一氏が指摘しているではないか。
上の引用部分を、一行ずつ解説してみる。
本書では、ほとんどの場合、交互作用を考慮していない.
交互作用、つまり絡み合った効果を積極的に取り扱うことはしませんよね。
それは交互作用がないからではない.
でも、無いから見ないとかそんな簡単な話ではないんです。
交互作用がありうるから、交互作用を省略した主効果のみの実験をするのである.
あるから、無いとしてやるんです。
え、難しい?
時系列で開発と市場をわけて考えてみましょう。
まず、開発途上で実験する時は、やっぱり限定された状況でになる。
その状態で交互作用があるようなものを作っちゃったとする(いや、大抵はそうですね)
そうすると、市場に出して未評価の因子の影響を受けた時、目的特性に意図しない影響が発生してしまう。
よって、市場で意図しない影響を発生させないために、開発途上では交互作用を省略して、つまり交互作用の影響を考えなくてもすむように、主効果だけで実験をするのです。
上の文にちょっと追加すると(()部が追加部分)
交互作用がありうるから、(市場で交互作用の影響が発生しないよう、)交互作用を省略した主効果のみの実験をするのである.
となります。
つぎ。
交互作用が大きいときには、あらゆる組み合わせの実験以外のどんなわりつけでもうまくゆかない.
交互作用の影響が大きいシステムを作っちゃった場合、全部の条件で試験しないと、結果が予測できなくなっちゃう。仮に量産品だと各納入先(工場とか過程とか)の状況まで考えて、全部の条件で試験をするなんて事実上不可能。
1因子ずつの実験でも、交互作用を省略した直交表の実験でもうまくゆかないのである.
1つの因子だけ変化させて(上だとホットコーヒーとビールを入れ替えるだけ)実験しても、交互作用を考えないことにして実験した直交表を用いた実験でも、結局うまくいかないものである。
交互作用を小さくする方法は、わりつけではなく、つぎのような固有技術や解析技術で解決すべき事柄だからである .
だって、交互作用は実験計画をうまいことやって減らすようなものではないからなんですよー。。ここで技術力を発揮して、交互作用の影響を受けにくいシステムを作りましょう!その方がコストも下がるし開発期間も短くなるし(勉強時間はかかりますが、、)、何より市場での不具合を未然防止することができる*2。
終わりに
品質工学(タグチメソッド)を一人で確立された田口玄一さんの名著から引用と解説をしてみました。
正直、実際に入手して読むまではどんなもんやろと思っていましたが物凄い深いしこの本を書いた段階でタグチメソッドの根幹は既に確立されている。
このブログを読んで理解できなかったけど、なにか良いものがあるかも、、、とピンと来た方。
とてもいい感性をお持ちだと考えますので、もし気が向けば色々と一緒にやっていきましょう。
もちろんただの相談でもいつでもどうぞ!
日本から良いものを出していきましょう!
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